2025.12.24

今年の年末調整は所得税の還付が多い?

皆様、こんにちは。
社会保険労務士の齊藤です。

12月や1月に支給される給与では年末調整による所得税の還付がありますので、楽しみにされている方も多いのではないでしょうか。今回は今年(令和7年)の年末調整による所得税の還付に関して、給与所得控除等の改正に触れながらその特徴を書きたいと思います。

年末調整とは所得税の精算

年末調整とは所得税の精算のことであり、「当年中の給与と賞与で天引きされた所得税」と「年間の所得額で改めて計算した当年中の所得税」を比較し、差異があった場合にその差額を12月給与や1月給与で還付又は追加徴収します。例えば、給与と賞与で計30万円の所得税が天引きされていた中、年末調整で計算した所得税が25万円だった場合は5万円が還付されるといった具合です。基本的に給与で天引きされている所得税は、年末調整をすることによりその一部が還付されるような制度設計になっているため大部分のケースで所得税は還付されると考えることができます。

今年は給与所得控除と基礎控除の改正があった

以前に本コラムでも紹介しましたが、今年は下記のとおり給与所得控除と基礎控除の改正がありました。

■給与所得控除

給与収入給与所得控除
改正後改正前
162万5千円以下65万円55万円
162万5千円超~180万円以下収入金額×40%-10万円
180万円超~190万円以下収入金額×30%+8万円
190万円超~360万円以下変更なし
360万円超~660万円以下収入金額×20%+44万円
660万円超~850万円以下収入金額×10%+110万円
850万円超195万円(上限)

■基礎控除

合計所得金額(給与のみだった時の収入額(一部記載省略))基礎控除
改正後改正前
132万円以下(200万3,999円以下)95万円(内、37万円は加算)48万円
132万円超~336万円以下(200万3,999円超~475万1,999円以下)88万円(内、30万円は加算)
336万円超~489万円以下(475万1,999円超~665万5,556円以下)68万円(内、10万円は加算)
489万円超~655万円以下(665万5,556円超~850万円以下)63万円(内、5万円は加算)
655万円超~2,350万円以下(850万円超~2,545万円以下)58万円
2,350万円超~2,400万円以下変更なし
2,400万円超~2,450万円以下32万円
2,450万円超~2,500万円以下16万円
2,500万円超0円

今回の改正は、給与所得控除、基礎控除ともに控除額を拡大するといったものでした。いずれも持ち出しなく収入から控除できるもので、その控除額が拡大されたわけですから当然減税に繋がっています。

給与所得控除については、下限の55万円を65万円に引き上げるものでしたが、給与収入190万円以下の方々しか恩恵を受けることができない限られたものです。一方、基礎控除に関しては、従前の48万円が所得に応じて「58万円~95万円」に引き上げられたもので、給与収入が500万円前後に満たないような方々がより恩恵を受けることができる内容の改正でした。

なお、下表が今回の給与所得控除と基礎控除の改正による減税効果のイメージになります。

給与収入(単身者)減税額(概算)
200万円24,000円
500万円20,000円
800万円30,000円
1,000万円23,000円

中間層以下の納税者の控除額が優遇された改正ではありましたが、所得税率は所得額に比例して上がりますので(所得税率が高い方が減税効果は高いため)、各収入層の減税額自体に大きな差はなく、概ね2万~3万円程度の減税効果となる改正であったことが分かります。

配偶者控除、扶養控除等の収入制限も見直しされた

いわゆる103万円の壁として存在した配偶者控除、扶養控除の収入制限は、上記給与所得控除と基礎控除の改正に連動される形で見直しが行われ、その収入制限は103万円から123万円に引き上げられました。この見直しも今年の年末調整から適用されています。

配偶者控除、扶養控除(一般の扶養控除の場合)ともに要件に該当すれば、納税者の収入から38万円を控除することができますが、対象者の収入制限が103万円から123万円になりましたので、年初時点では配偶者控除や扶養控除の対象としていなかった家族が、年末調整の結果、配偶者控除や扶養控除の対象になったというケースは少なくないと思われます。

また、19歳以上23歳未満の親族が対象になる特定親族特別控除の新設により、特定扶養親族の控除額(63万円)と同等の控除をより広く受けることができるようになりました。従来の考え方であれば123万円が対象者の収入制限になるところでしたが、150万円までは63万円の控除を受けることができるといったもので(150万円超以降は段階的に控除額縮小)、主にアルバイトをしている大学生の親族がいる納税者には恩恵があったと言えます。

今年の給与で天引きされた所得税は従前制度を前提としていた

毎月給与で天引きする所得税は、所得額に応じた所得税額が記載されている源泉徴収税額表というものを元に天引きするルールになっています。この源泉徴収税額表は毎年、前年12月までには公表されてそれを当年の給与計算で利用しますが、その時点で適用されている制度を前提に作成されています。そのため、令和7年分の源泉徴収税額表には従前制度に基づいた所得税額が記載されており、実際、毎月の給与ではそのとおりに天引きされていました。

【結論】令和7年の年末調整は所得税の還付が多くなる可能性が高い

前述のとおり、令和7年の毎月の給与、賞与では従前制度に基づいた所得税が天引きされていましたが、給与所得控除や基礎控除、配偶者控除等の改正は今年の年末調整から適用されています。冒頭で「『当年中の給与と賞与で天引きされた所得税』と『年間の所得額で改めて計算した当年中の所得税』と比較」と書きましたが、「当年中の給与と賞与で天引きされた所得税」では改正前のルールが適用され、「年間の所得額で改めて計算した当年中の所得税」では改正後のルールが適用されることになっていますので、結果的に今年は、毎月の給与と賞与で所得税を天引きし過ぎていたことになります。つまり、今年は、例年以上に所得税が多く還付される可能性が高くなっているのです。

今回は年末調整に伴う所得税の還付に関するコラムでした。
これからも本コラムを通じて皆様へ有益な情報をお届けできればと思います。

以上

齊藤 拓也
社会保険労務士 齊藤労務事務所 齊藤 拓也
千葉県市原市生まれの墨田区在住。
地方銀行(千葉県)、金融商品デリバティブ取引所、ファイナンシャルプランナーの団体、社会保険労務士法人でのキャリアを経て2020年4月、東京都中央区日本橋に「齊藤労務事務所」を開業。就業規則整備、助成金活用の提案をメイン業務として活動中。
現在は第一線から退いているもののパチンコ業界にはユーザとして長く関与。大学生活では文武両道に努めつつ「オークス2」、「セブンショック」、「CRモンスターハウス」、「CR必殺仕事人」に熱中。大学卒業後はスロットへ路線変更して「花伝説」、「猛獣王」、「アントニオ猪木という名のパチスロ機」、「スーパービンゴ」、「北斗の拳」などで万枚の大台を記録。好きな機種は「ハナハナ」。