2026.07.01

「年末からパチンコが良くなる」と、中小は苦戦する

いつもCFYコラムを御愛読いただきありがとうございます。船井総研 渡邊龍信です。

梅雨も明け、いよいよ夏本番という時期になりました。ただ、私の頭の中はもう年末に向いています。今年の年末は、ここ数年で一番大きな構造変化が起きる年末になります。今月は、その「変化の地図」をいつ描くかという話です。

6月の売上動向

先に数字の話をしておきます。全国の売上動向はこのようになっています。

レート前月比前年比
4円パチンコ94.5%96.3%
1円パチンコ94.4%95.0%
20円スロット94.9%99.9%
5円スロット94.4%101.0%
全体94.7%98.0%

数字の読み方はシンプルです。前月比が全レートで94%台に揃って落ちているのは、5月がGWと土日の多さで上振れしていた、その反動です。急減ではありません。問題は前年比のほうです。前年を超えているのは5円スロット(101.0%)だけ。20円スロットが前年並み(99.9%)で踏みとどまり、パチンコは4円も1円も前年割れ。相も変わらず構造としては、はっきりとパチンコからスロットへ流れ続けています。

注目してほしいのは1円パチンコです。前年比95.0%とまだ前年割れではありますが、下げ幅は思ったほど広がっていない。調子の良い店舗の現場で理由を追うと、30〜40代の客層が入ってきております。高齢者メインの店は年金支給日頼みで弱含み、若い層を1円で拾えている店だけが下げ止まっており、なんなら5月対比でも上がっている店舗も増えています。「1円は高齢者の遊び場」という前提は、もう疑った方がいいです。

7月はどう動くか(6月対比の見通し)

では7月はどうなるか。私の読みはこうです。

レート7月 対 6月見方
4円パチンコ 99〜101%谷からの戻りと構造的続落が相殺、ほぼ横ばい
1円パチンコ100〜102%夏休みの若年流入が支え。ただし年金日がなく上値は限定
20円スロット101〜103%夏ボーナス+若年で最も堅い
5円スロット100〜102%前年超えの基調を継続
全体100〜102%GW反動の谷からの小幅戻し

月の総額で見ると、営業日が6月の30日から7月は31日へ1日増え、海の日(7/20)の三連休も加わるため、合計売上ベースでは6月比103〜105%程度まで伸びる計算です。一方で、7月は年金支給日がありません。6月にあった中旬の山が消えるので、シニア層・1円に頼った店ほど中だるみしやすい。真夏の平日も軟調になりがちです。最大の山であるお盆は8月。つまり7月は「谷からの戻し」であって、攻めどころは月初のボーナス資金と海の日の三連休に集中します。ここを取り切れるかどうかです。

年末、パチンコが「スロット化」します

ここからが本題です。今年の年末、パチンコは大きく変わります。

ひとつは固定スタートです。前号で「フェアスタート装置」とお伝えしたものが、いよいよ製品・制度として固まってきました。次のソードアート・オンラインを皮切りに、各メーカーが千円スタートを一定回転以上を保証する固定スタート機を本格投入してきます。私が数年前にスマパチが投入されるタイミングで、「パチンコは衰退しかない。遊技を始めた瞬間から期待値で負けが確定しているから。大手が有利になり続ける。店によって千円で18回回る台と12回しか回らない台がある、こうなっては12回の店にはよっぽどのことがないと行かない。立地が良くても行く頻度は下がる」——これは現場でずっと言われ続けてきたことですが、それがついに機械の制度として担保されるようになりますね。これは私の中ではかなりら変わる流れとなります。

もうひとつはまだ言っていいのか分からないので今回は伏せますが、かなり良い流れになってきています。

業界が何を狙っているか。はっきりしています。特定日に抽選1番を引いたユーザーが、ATでなく、ジャグラーでなくパチンコに走る未来を見据えてると思います。さすがに1番でパチンコはないとしても、50番ならパチンコに座ろうかな、と。これが現実になれば、これまで「スロット8・パチンコ2」だった時間比率が、パチンコ側に戻り始めます。そうは言っても7:3かもしれませんが。やはり少しタイミングが遅すぎましたね。

でも、パチンコが当たるほど、中小は苦しくなります

ここで浮かれてはいけません。正直なところ、このパチンコ復権を一番警戒すべきは中小ホールです。なぜか。パチンコが当たれば当たるほど、中小は苦しくなる——これが今回いちばんお伝えしたい構造です。

考えてみてください。いま中小が思い切ってスロットに投資できているのは、裏を返せばパチンコがあまり当たっていないおかげなんですよね。パチンコが外れているから、限られた資金をスロット一点に集中できている。ところがパチンコが当たり出すと、そうはいきません。パチンコの機械も買い、ユニットを買い足す必要が出てくる。つまり、スロットに集中できていた投資が、スロット以外にも振り向けざるを得なくなって、分散してしまうんです。

そうなると効いてくるのが、資金力です。両方に張れる体力のある大手が、当然有利になる。しかもパチンコは、すでにスタートダッシュの初期値が高い——稼働の土台を持っている大手が有利な状況です。パチンコの稼働が十分にある大手は「機械を買っても今より5,000発戻るなら賭けてもいい」と判断できる。でも、スロットでようやく踏ん張っている中小が、そこに同じようには張れません。パチンコ復権の波は、資金と土台のある側にこそ追い風で、中小にはかなり厳しい戦いを強いる、と私は見ています。

だからこそ、年末までの今この時期に詰めておくべきことがあります。機械の買い方のサイクルを、もう一度設計し直すことです。台数を揃えることと、その台数が稼働と粗利を生むことは、全く別の仕事です。「この機械にこれだけかけたら、これだけ稼働が戻り、これだけ粗利が増える」——この一本の線が引けていないと、年末にオーナーを説得できません。1台60万円のトレンド機を1台追加すれば、それがそのまま60万円以上の利益になるのかどうか?
この感覚を、機械を増やす前に組織で共有しておいてください。

「攻めの設定」だけでなく「守りの設定」を

設定付きパチンコの話で浮かれる前に、足元のスロットで起きている現実も直視してください。

攻略情報が、設定の利益を溶かしています。北斗転生の台粗利は、3月16日から4月6日は1台約3,600円ありました。それが直近1ヶ月では約700円。なんなら月平均でマイナスというところもあります。何もスペックは変わっていません。攻略情報が出回って、プロ客に削られているだけです。

設定を入れることは「攻め」ですが、入れた設定の利益を守るのも運用のうちです。やるべきは難しいことではありません。攻略サイトあたりをチェックして、自店の客層が今プロ寄りなのかライト寄りなのかを把握する。それに対して対策をする。それだけで、どの機種でどこまで設定を使うかの判断が変わります。攻めの設定と守りの目線、この両輪が回って初めて、設定は利益になります。
なぜか40歳以上の方は炎上という言葉を極度に嫌う傾向にあります。炎上というのもプチ炎上と燃え続けるは違います。一瞬話題になったくらいでは何もなりません。シャッター対策をすると炎上するかも、、、と言いますが、一部の勝ち金額だけを追求したユーザーに文句言われたところで、その人らは特定日にだけきて食い荒らすユーザーです。その人らが平日にいなくなったところで、何も影響ありません。それよりも転生好きなユーザーが打ちづらくなるコーナーを作ってる方に問題があります。しっかりと対策をしましょう。

ここで、機械の話の前に、どうしても言っておきたいことがあります。この遊技人口減少の業界で、店舗の業績が上がるか上がらないか。最後にそれを分けるのは、やはり店長・責任者です。そして業績が上がっていない店の本当にあるあるなのは、店長に「絶対に上げてやる」という気概が足りないことなんですよね。これは正直、非常に多い。
この事についてはコラムが長くなり過ぎてるので次回に記載します。

まとめ:年末の追い風は、準備した店にしか吹きません

今回のコラムで言いたかったことは一つです。年末に来るパチンコ復権の大転換は、準備した店だけの追い風であって、準備していない店には逆風になる、ということです。とりわけ中小は、パチンコが当たるほど投資が分散し、資金力と初期値で勝る大手との差が開きやすい。だからこそ準備が要ります。

固定スタートも、とある取り組みも、それ自体は誰にでも平等に与えられます。でも、機械の買い方を設計し直し、何をやらないかを決め、気概のある店長を抜擢採用して、設定運用するためにも利益を守り、その追い風を稼働に変えられる。準備していない店は、機械代だけが倍になって沈みます。

5月のコラムで「お盆は当日ではなくお盆前で決まる」と書きました。年末も全く同じです。年末当日に何を出すかではなく、7月の今、年末までの地図をどう描くか。ここで差がつきます。

厳しい時代だからこそ、半年先を設計できる店が残ります。まずはこの夏のうちに、自店の機械の買い方サイクルと、やらないことのリストと、店長に何を任せるかを、紙に書き出すところから始めてください。

渡邊 龍信
株式会社船井総合研究所 アミューズメント支援部 シニア経営コンサルタント パチンコグループマネージャー 渡邊 龍信
国立大学 理学部数学科卒業。国立大学大学院 応用数学科卒業。アミューズメント支援部新卒入社史上最年少でチームリーダーに着任から、最年少でグループマネージャーに着任。400台以上の大型スロット専門店立ち上げ実績は10件以上携わっており、スロット増台成功実績は40件以上、多数の20円スロット業績アップ実績をもっている。直近2年間の高射幸機に頼らない増収増益方法を指導しており、20円スロットの業績アップの実績は、元スロプロで培った超ユーザー目線と、大学での数学の知識を駆使した数理マーケティングで「 高精度な 」時流予測とスロット機種分析によって実現している。