いつもCFYコラムを御愛読いただき、誠にありがとうございます。船井総研 渡邊龍信です。
お盆商戦、お疲れ様でした。朝晩に少しだけ秋の気配が混ざる時期になりました。
今月の結論から申し上げます。来年2月に業界には厳しくなる戦いが予定されています。実質的に、新台では戦えない月です。 そして過去の入替自粛がどうなったかというと、入替は前後にずれただけで総量は減らず、店は出玉で数字を例年並みに保っていました。今回も同じ道が見えています。ですから今から用意すべきは機械ではなく、出玉の原資と、それを実施する日です。
その日の答えは、今年のお盆とゴールデンウィーク、連休4回分のデータがはっきりした答えを出しました。
8月の売上動向
全国データ(自社集計)、8月の実績です。月末1日分のみ推定を含みます。
| レート | 先月対比 | 前年対比 |
| 4円パチンコ | 107% | 101% |
| 1円パチンコ | 108% | 100% |
| 20円スロット | 102% | 105% |
| 5円スロット | 108% | 106% |
| 全体 | 105% | 103% |
先月号で「7月比102〜104%」と読みましたが、実際は105%。読みより強かったです。ただし今年の8月は土日10日、7月は8日。休日の台売上は平日の1.27倍(当社実測)ですから、この差だけで前月比に約1.6%の下駄が乗ります。実質103%程度、例年並みの夏です。前年対比のほうは昨年8月も休日11日で同条件。全体103%、これが実力です。
丸めで見えなくなっているものが二つあります。20円スロットだけが前月比102%とあま。伸びていません。 同じスロットでも5円は108%。元々が高いというのもありますが、寂しい結果でした。そして1円パチンコの100%は、正確には99.9%。わずかに前年割れです。
8月に起きたのは入れ替わりです。7ヶ月ぶりに4円パチンコが前年を超え、代わりに1円が割った。ただし+1%ですし、お盆も年金も昨年8月にありましたから「お盆と年金のおかげ」では説明になりません。構造変化と読むのは早計です。
連休4回でわかった、上乗せが乗る日と乗らない日
8月の稼働を平日・祝日・休日に分けたとき、想定と違う姿が出ました。1台あたり打込の全国平均です。
パチンコ
- 通常の平日:お盆の平日(8/10・12・13)=通常の土日の89%
- 山の日(8/11・火・祝)=通常の土日の95%
- 通常の土日
- お盆の土日(8/15〜16)=通常の土日の+5%
スロットも同じ形で、お盆の平日は通常土日の91%まで上がる一方、お盆の土日は通常の土日と±0%でした。
これが偶然でないことを連休4回分で確認しました。昨年のお盆、そして今年と昨年のゴールデンウィークです。GWの祝日は通常の土日と同水準(100〜103%)まで到達し、連休中の土日への上乗せはわずか。お盆の平日は通常土日の89〜92%止まり。 4回とも同じでした。
つまり上乗せが乗るのは「休日でない日が休日に変わるとき」だけ。すでに休日の日には、積んでもほとんど動きません。 法定祝日はすでに休日側です。連休中の土日にも年によって+4%程度は乗りますが、平日側の+13〜38%とは桁が違います。
私も先月号でお盆を「山」と一括りに書きました。お盆に山はありません。あるのは「平日の壁が数日だけ消える」という現象です。
9月のシルバーウィークは、守る週です
9月は土日8日と2日少ないものの、祝日が3日(9/21敬老の日・9/22国民の休日・9/23秋分の日)あり、休日は30日中11日で8月と同数です。昨年9月より1日多い。9月が落ちるのは休日が減るからではなく、お盆と年金という8月固有の需要が消えるからです。
シルバーウィークは9/19〜23の5連休、休みを足さずに成立するのは11年ぶりです。ただし9/21〜23は祝日、9/19〜20は土日。5日とも休日水準に張り付くため、上積みの余地が最も小さい週になります。客数の絶対量は最大ですから取りこぼしは許されませんが、攻める週ではなく守る週です。 余白は連休以外の平日、9/24・25や月末にあります。実験はそこに置いてください。
9月・10月の見立て
1日あたり売上ベースで、9月は8月比6%減、10月は10%減。ただし前年比では両月とも全体102%前後を保てる形です。4円パチンコの落ちが最も深く、10月は8月比87%・前年比99%。8月比で落ちても前年比を割らなければ合格、割ったら実力の問題。 この線引きを月初に共有してください。
底は9月ではなく10月です。そしてその10月に最低賃金の改定が重なります。 今年度の目安は全国加重平均+55円の1,176円、4.9%増。発効は10月以降、都道府県ごとに順次です。稼働が最も落ちる月に人件費が上がる。 複数県に展開されているなら、10月の人件費予算は県別に組んでください。
8月の新台動向──17機種中9機種が平均に届いていません
8月導入は17機種(パチンコ9・スロット8)。同じ経過日数の新台同士で比べて9機種(53%)が同期の新台平均に未達。7月組は21機種中15機種(71%)でした。順位の母数(パチンコ22・スロット16)は7月導入分を含む導入60日以内の全新台です。
パチンコ(9機種の一部)
◎ e ソードアート・オンライン アリシゼーション 夜空 200%
→ 22機種中で断トツの1位。経過27日・初週比80%で減衰も浅い
◎ eフィーバー機動戦士ガンダムSEED クライマックス 143%
→ 2位だが初週比60%。初動先行型で9月中の失速前提で
スロット(8機種の一部)
◎ Lパチスロ喰霊-零-Re 130%(8/17導入・経過13日・初週比90%)
◎ Lとある魔術の禁書目録2 128%(初週比72%)
△ Lとんでもスキル 117%(初週比75%)
△ L邪神ちゃんドロップキック 114%(初週比74%)
パチンコには2.04倍という突き抜けが出た一方、スロットは平均超えが5機種と打率は高いのに突き抜けが不在でした。
先月号の「年末は番長と北斗の二枚看板」も訂正します。顔ぶれが違いました。 年末に名前が挙がっているのはスロット大手2社の版権機が各1本。サミーの大型版権は間に合わない可能性もありますね。ただどれも温度感がどちらも高くありません。
来年2月、射幸性を意識した機械の強化月間が予定されています
現在、12月以降により多くのBT機が投入される見通しとしています。そして来年2月が強化月間の見通しです。
言葉は「強化月間」ですが、現場で起きることは違います。あの月は実質的な新台入替の自粛期間に近い状況となります。2月に新台で殴り合う選択肢が、事実上なくなります。
過去にも同じことがありました。そして市場は変わりませんでした
入替自粛は珍しい話ではありません。全国一斉が3回。 2008年の洞爺湖サミット、2010年の横浜APEC、直近が2016年5月の伊勢志摩サミット(5/2〜5/27、新台・中古機・チェーン店間移動すべて)。
- 2017年9月12日〜11月12日(2ヶ月) 高知
- 2018年9月11日〜11月11日(2ヶ月) 高知
- 2019年5月1日〜6月30日(2ヶ月) 高知
- 2019年5月27日〜6月29日(34日) 愛媛
- 2019年5月下旬〜7月中旬(約50日) 大阪
- 2023年5月16日〜31日(2週間) 高知
2ヶ月止められた県が3回あります。
では何が起きたか。機械は減ったのではなく結局前後にずれただけでした。結局大量に投下されます。
そして数字です。2008年の洞爺湖サミット後、全日遊連が6,545店舗から回答を得ています。
- 入替台数が「減った」 約75%
- 営業への影響「なかった」約60%
- 「悪い影響があった」 約21%(最多理由=稼働の低下 約58%)
- 「良い影響があった」 約17%(最多理由=機械代の削減 約58%)
入替が減ったのに、6割が「影響はなかった」。 最大の武器を1ヶ月封じられて、数字は例年並みに収まったわけです。では何で埋めたのか。
業界の記録にその集計はありません。残っているのは「影響はなかった」という結果だけです。ただ、私が現場で見てきた自粛期間の答えははっきりしています。出玉です。 新台が打てないなら出すしかない。どの店も同じことを考え、同じように出した。だから稼働は例年並みに収まることになりました。
そして市場は何も変わりませんでした。 入替は前後にずれて総量は減らず、出玉を削り合ってシェアは動かず、明ければ元通り。2010年のAPECでは経営者団体が「季節要因を超える営業の悪化」「12月、1月にも悪影響の引きずり」とまで報告しています。逆にいえば、ここで攻めることをしないと、他店舗にシェアを奪われることになるでしょう。
だから、備えるのは機械ではなく出玉です
しかも今回、同じ結末になりそうな理由がもう一つあります。仮にジャグラーのBT化で比率10%を達成しても、減るのはもともと低単価だったジャグラーで、高単価AT機の台数は変わらない。 だから市場全体の射幸性は動かない。「何台がBT機になったか」ではなく「何と入れ替わったか」だという点です。
そして足元の当社データでは、パチンコの玉利は2025年11月以降ずっと前年超え(102〜106%)なのに、1台あたりの打込は2026年2月以降ずっと前年比94〜97%。取る単価を上げながら、打たれる量が細っている。 ここに「新台で戦えない月」が来ます。
準備は三つです。
一つ目、原資を今から積む。 年末に高い機械を買えば、2月に出す玉はありません。年末は買う月ではないと申し上げているのはこれが理由です。勇気をもって取り組む姿勢が大事です。
二つ目、出す日を選ぶ。 全店が同じ月に出すなら、同じ日に出しては意味がありません。来年2月は祝日が2/11と2/23の2日だけで連休がなく、普通の平日が18日まるごと残っています。 土日に横並びで出すのは、埋まっている日に玉を積むだけです。2月の出玉計画は金額ではなく曜日から設計してください。
先月号の答え合わせも置いておきます。「8月末入替の筆頭」と書いたからくりサーカス2は初週比37%・0.86倍まで沈み、予告通りでした。一方で外したものもあります。◎を付けた戦国コレクション6は1.32倍から1.05倍まで落ちました。 必殺仕事人VIも1.59倍から1.36倍、初週比47%。同期平均は上回っており残す側です。
年末に出てくる機械を0にする訳では無いですが、取り組みは考える必要はありますね。
とりあえず出してきてるだけの機械は完全にスルーするのも視野だと思います。
まとめ
- 8月は前年比103%。前月比105%には休日の下駄が約1.6%。4円パチンコが7ヶ月ぶりに前年超え、代わりに1円が前年割れ。 20円スロットだけがあまり伸びていません。
- 上乗せが乗るのは「休日でない日が休日に変わるとき」だけ。シルバーウィークは守る週。実験は連休以外の平日に。
- 2月は実質的な入替自粛期間。 過去も入替は前後にずれ、店は出玉で例年並みを保ち、粗利が削られました。年末の機械代を我慢して原資を作り、出す日を平日に寄せ、出したことを伝える。同じ削るなら、返ってくる日に削ってください。
過去の自粛で市場が変わらなかったのは、施策が悪かったからではありません。全員が横並びで、同じ月に、同じ日に、同じように出したからです。裏を返せば、そこを半歩ずらせる店だけが、同じ出玉で違う結果を取れる。 厳しい時代だからこそ、横並びから外れる設計にこそ腕が出ます。
残暑厳しき折、皆様のご健勝をお祈り申し上げます。

